Week 5-6 Project
Week 5: データの収集
目的: 実際のフィールドワークで使用するデータ収集手法とツールを理解し、実践的なスキルを身につける。
フィールドワークで効果的にデータを収集するためには、さまざまな方法を理解し、適切に選択することが重要です。各方法には、それぞれの目的や状況に応じた特有の利点と欠点があります。この講義では、代表的なデータ収集方法である観察、インタビュー、アンケート、文書分析について学びます。
1. 観察法
観察法は、研究者が現場で直接観察を行い、対象となる行動や現象を記録する方法です。
利点: 現場で直接データを収集できるため、対象の自然な行動や現象を詳細に把握できる。特に、新しい仮説を立てるための探索的研究に適している。
欠点: 研究者の主観が入りやすく、バイアスがかかる可能性がある。また、観察には時間がかかり、長期的なコミットメントが必要な場合がある。
2. インタビュー
インタビューは、対象者から直接的に情報を引き出すための手法で、対面での会話を通じて深い洞察を得ることができます。
利点: 深い情報や背景情報を得ることができる。インタビューの質問を柔軟に変更することで、予期しない回答から新たな発見が得られることもある。
欠点: インタビューアーのスキルに大きく依存し、質問の仕方によってはバイアスがかかる可能性がある。また、対象者の個人的な偏見や記憶の曖昧さがデータに影響することもある。
3. アンケート
アンケートは、標準化された質問に基づいて、多くの人から効率的にデータを収集するための方法です。アンケートは実施後、自分でエクセルなどを使いグラフやチャートにしたり、またそれらを発表用資料として使います。
利点: 多数の対象者から迅速に情報を集めることができる。統計的な分析が可能であり、結果の一般化が比較的容易。
欠点: 質問が固定されているため、深い洞察を得にくい。回答率の低下や回答の正確性の問題が発生する可能性がある。
4. 文書分析
文書分析は、既存の文書や記録を利用してデータを収集する方法です。文書の例として、フィールドワーク先の発行する資料(パンフレット、ポスター、チラシ、プレゼンテーション資料等)やウエブサイト、看板、報告書、メモ、新聞記事、過去の研究などが含まれます。
利点: 既存のデータを利用するため、新たなデータ収集に時間やリソースをかけずに済む。歴史的なデータや広範囲の情報をカバーすることができる。
欠点: データの質や信頼性が文書の作成者に依存するため、偏った情報が含まれる可能性がある。また、現場の最新の状況を反映していない場合もある。
データ収集方法の選択
各データ収集方法の理解を深めた後は、どの方法がフィールドワークの目的に最も適しているかを判断する必要があります。複数の方法を組み合わせて使用することも、データの信頼性を高め、多角的な視点を提供するために有効です。
データ収集時の留意点
フィールドワークでデータを収集する際には、収集方法だけでなく、データの質を確保し、信頼性を高めるための注意点についても理解しておく必要があります。データ収集の過程で発生し得るバイアスや信頼性の問題を認識し、それらを回避するための適切な対策を講じることが重要です。
1. データの信頼性を高める方法
データの信頼性とは、収集したデータが正確であり、誤りがないことを指します。データの信頼性を確保するためには、以下の点に注意する必要があります。
一貫性のある方法論: データ収集に使用する手法やツールが一貫していることを確認します。同じ方法を使い続けることで、結果の比較や分析が容易になります。
試行錯誤: フィールドワークを始める前に、データ収集方法を試行錯誤してみることが有効です。これにより、潜在的な問題点や課題を事前に発見し、調整することができます。
2. バイアス(bias)を避ける方法
バイアス(bias)とは、データ収集の過程で意図的または無意識に生じる偏りのことです。バイアスを避けるためには、次のような対策が必要です。
多様な視点: さまざまな背景や視点を持つ対象者からデータを収集したり、複数回フィールドに出向いて調査することで、特定のグループや視点に偏らないデータを確保します。
中立的な質問: 質問が先入観を含まないようにすることが重要です。質問の表現や順序が、回答に影響を与える可能性があるため、慎重に組み立てる必要があります。アンケートやインタービューの質問事項を考える場合は、グループ内でよく話し合って意見を聴きながら編集しつつ進めましょう。
環境の影響: データ収集を行う環境が対象者の行動や回答に影響を与えないようにすることが重要です。例えば、観察を行う際には、対象者がフィールドワークをしている人の存在を意識しすぎないよう配慮します。その例としては、(1)観察法でデータ収集する前に、事前に対象者にフィールドワークの目的等説明しつつも、いきなり行動記録をとるのではなく、相手の緊張が(ある程度)とけたと思われてからデータ収集を開始したり、インタビューで、最初の5分程度世間話をして相手の緊張をほぐした後に開始する等があげられます。
3. データの正確性と完全性
データの正確性とは、収集したデータが実際の状況を正確に反映していることを意味し、完全性とはデータが欠けていないことを指します。これらを確保するためには、以下の点が重要です。
複数のデータ収集方法: 複数の方法(例えば、インタビューと観察)を組み合わせることで、一つの方法では見落としがちな情報を補完することができます。
クロスチェック: 異なるデータソースから得た情報を比較し、一貫性を確認します。これにより、データの正確性が検証され、信頼性が向上します。
データの更新: フィールドワークの進行中にデータが変化する可能性があるため、最新のデータを確保するためにデータ収集を繰り返すことが重要です。
4. 倫理的配慮とプライバシー
フィールドワークでは、調査対象者のプライバシーを尊重し、倫理的にデータを収集することが求められます。
インフォームドコンセント: 調査を行う前に、調査対象者に研究の目的、方法、使用されるデータについて十分に説明し、同意を得ることが必要です。
プライバシーの保護: 収集したデータの保管と使用に関して、対象者のプライバシーを保護する措置を講じることが重要です。個人情報は匿名化し、安全な場所に保管するよう心掛けましょう。また個人の顔がはっきりと特定できるようなものをポスターやプレゼンテーションファイルに載せる場合には、公開前にその個人から同意をとるようにしましょう。
課題
実際にグループでフィールドに出かけて、上の「主要なデータ収集方法」書かれている1〜4のどれかの手法を使ってデータを集めてみよう!
注意点
1) グループでのフィールドワークは日時が合わないこともあるので、必ずしも全員一緒である必要はありません。むしろ役割分担と締切を決めて、いろんなデータを集めてみるのがより良い手法かもしれませんので、日程・実施方法・参加グループでしっかり検討してください。
2) 集めてきたデータはなるだけ当日中や翌日までにTeamsなどの共通フォルダに整理をして入れ、何のデータかわかるようにメモ・ノートあるいはフィールドワーク日記的なものを残しておくこと。(数日でも期間をあけると忘れてしまうことがあるため。)
3) 上記にある主要なデータ収集方法1~4のどの手法が使えるかは、自分たちが行くフィールド の状況によって異なります。なるだけ複数の方式を組み合わせて、多様な視点でデータをとれるようにしてください。
Week 6: English Speaking Exercise
ウォーミングアップ: 3, 2, 1
[2分間で以下のテーマについてメモをとりましょう。そして書いたメモをまとめ、2人で3分間話し合いましょう。会話の相手を換えてまた同じ内容について2分で話しましょう。最後にもう一度相手を換えて1分で話しましょう。]
テーマ:Where’s the best place to spend free time on campus?
キャンパス内で自由時間を過ごすような良い場所はありますか?
Useful English Expressions
I like...
I prefer...
I usually...
例:I like the area outside of Amelie Cafe because it has a basketball hoop. I like to play with my friends after I eat.
Week 6 フィールドワークデータ収集〜ポスター作成まで
フィールドワークで収集したデータは、そのままでは意味を持たず、解釈を通じて初めて有意義な結論を導くことができます。この週では、収集したデータからどのようにポスターを作っていくかについて学びます。次のStep 1 ~ 3を参照にしてポスター作成まで繋げてください。
Step 1. フィールドワークデータからポスターやプレゼンテーションまでのステップ
データから結論を導くには、収集した情報を慎重に分析し、その意味を理解する必要があります。これには、以下のステップが含まれます。
データの整理と要約: まず、収集したデータを整理し、要約することが重要です。これは、フィールドデータの種類や形式に応じて、Step 2のSDGsとどう関連しているか発見することが重要です。データの整理と要約はフィールドから戻って、なるだけ時間をおかずに行なってしまいましょう。
パターンとトレンドの特定: 次に、フィールドデータの中から繰り返し現れるパターンやトレンドが、もしあれば、それを特定します。
Step 2. データの結果をSDGsと関連付ける
SDGs(持続可能な開発目標)とデータを関連付けて解釈することは、フィールドワークの成果を広範な社会的文脈に位置づけるために重要です。これには以下のアプローチが有効です。
SDGsの目標とターゲットの理解: まず、Week 2や3で自分のグループがリサーチしてきたSDGsの問題をもう一度理解することが必要です。それぞれの目標が何を目指しているのか、また目標に対して、今回のフィールドワークで得た情報がどう関連づくのかを考え、グループの皆で共有をします。また自分の担当するSDGsのゴールだけではなく、そのゴールに設けられたターゲットとの関連性を見てみるのも良いでしょう。
フィールドデータとの連携: Week 2, 3のBasic Research、SDGsのゴール・ターゲットなどを再度理解した上で、フィールドで見たり聞いたりしたことが、どのように自分の担当するSDGsと関連しているか考えてみよう。フィールドで見たり・聞いたりしたことは、担当するSDGsに関する問題かもしれませんし、問題に対する解決策(行動)かもしれません。どちらなのかをしっかり見極めた上でデータを整理していきましょう。
Step 3. 説得力のあるポスター(プレゼンテーション)の準備
データから導き出した結論やSDGsとの関連性を効果的に伝えるためには、ポスター(プレゼンテーション)の作り方にも注意が必要です。
視覚的な表現: グラフやチャートを使って、データの結果をなるだけ視覚的に表現します。とってきた写真やインタビュー結果など、視覚的なツールを使うことで、データのパターンやトレンドをより明確に示すことができます。写真であれば、特徴的なものを載せたり、別途参考資料としてどこかにアップロードや掲載ができます。またインタービュー結果であれば、特徴的な部分をまとめて要約したり、インタービューの対象者が言ったことを自分で翻訳して、そのまま引用できます。(そのまま引用する場合は、必ず、" "にいれること。)
ストーリーテリング: 結論を伝える際には、グループ内でデータが語るストーリーを明確にします。Week 2や3で行ったBasic Researchとの関連性を考え、どのような社会的課題が浮かび上がっているのか、それに対してどのような行動(解決策)が求められたり、実際に現場で行われたりしているのかを考察し、発表用の結論へと導き出します。
クラス内アクティビティ&課題
1. Week 5で集めたデータを使って自分のリサーチテーマとの関連性を考えつつ、グループあるいは自分でポスター発表のための構成(論理・デザイン)を考えてみましょう。
2. Week 7のところを読んで英語による中間報告の準備をしてみよう。
Assignments